甘く、苦く
第85章 大宮【スフレ】
大野side
昔から照れ性なのは変わらない。
「…和、」
名前を呼ぶだけで、動揺しちゃってさ。
部屋全体の空気が
動くんじゃないかってくらい
大きく体を向けた。
「ちょっ、そんな動かなくても…」
俺が微笑みかければ、
すぐに顔を赤くしてふいっと目を逸らす。
「ねえ、今日はもう帰る?」
「……あー、どうしよう。」
「よかったら、さ、」
どくんどくんと、脈打つ鼓動は
どんどん早くなる。
…和の顔を見ることさえも
ままならない。
「…今日、泊まって、いかない?」
「っ…」
ダメかな、ダメだよね…。
今焦ったって、意味ないよね。
「…お前が、」
「ふえ?」
「お前が、いいなら、俺もいいけど…」
また目を逸らしてしまい、
長い沈黙が訪れる。