甘く、苦く
第85章 大宮【スフレ】
二宮side
朝、目覚めてすぐに
好きな人の顔が見れるなんて
すごく幸せだ。
「…ん、はよ」
「…おはよう」
俺らしくない俺を見せたくないと思う反面、
もう恋人なんだから砕けても…
なんて未だに躊躇っている。
「…ん?」
ぎゅ、と腰に抱きつかれて。
「和の、匂いするー」
と、目を細めて笑う。
…朝から、これは────…
俺だって男だし、
好きなやつのこんな姿みたら、
…なんていうか、その……。
「…帰んなくちゃ」
「え?」
「家、戻る」
「ええ、まだ起きたばっかじゃん…」
不服そうな智を宥めて、
また来ることを約束する。
「…いつでも会えんじゃん。
割とちけぇとこに住んでんだから。」
「…鈍感。
うわー、和が振られる理由が
すごいわかっちゃったんだけど…」
「あ?」
「…なんでもないよ、ほら、行けば。」
ぷいっとそっぽを向いて、
拗ねたように唇を少し尖らせている。
…なんだよ、もう。
「…はいはい、鈍感で悪いですね。」
「…いつ来んの。」
「は?」
「次、いつ来んのさ。
急に言われたって
なーんにも用意出来ないからねっ」
パーカーのポケットに
両手を突っ込んで。
頬を膨らませて睨む。
…いやいや。
可愛すぎんだろ。