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甘く、苦く

第87章 にのあい【この距離がどうにかならないかな】



冷蔵庫の前で、ひとり。

手に持ったチョコレートを
見つめて立っていた。


居なくなったニノが、
このがらんとした部屋に
残していったたった一つのもの。

頭を過ぎる、

「あとで食べるんだから、食べないでよね」

というニノの声。


ばり、と乱暴に箱を開けて、
チョコレートを齧る。



怒れよ…

顔を真っ赤にさせて、
俺の名前を呼んで。


「ニノっ…」


俺の悪いところがあるなら、
全部、直すから…


早く、俺んとこに帰ってきてよ…



・・・


また始まるツアー。

「ねえねえ相葉ちゃん、
これも美味しそうだね」

「あ、うん…」

隣で瞳をキラキラさせて
ケーキを見つめるリーダー。

どれにしよっかなぁ〜なんて、
呑気に欠伸をしながら。

「ん、俺これにする!
相葉ちゃんは?」

ふわん、と微笑んだその顔に、
妙に癒されて。

「…これにしよっかな」

「あ、それ、ニノ好きそうだね」


ばっ…

すぐ後ろにニノがいるのに…!

これじゃあ未練たらたらな
ダサいヤツじゃないか!


「そう?
美味しそうだなって思っただけだよ」

「俺にも一口ね!
あ、翔ちゃーん、食べるー?」


パタパタと翔ちゃんの方へ
笑顔で駆けていくリーダー。

松潤は打ち合わせでいない。



…あれ。




ニノとふたりっきりだ。

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