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甘く、苦く

第88章 大宮【In Fact.】



人間って、
すごくつまらない生き物だと思う。

動物界の頂点に立っているのに、
一番忙しなく動くのは人間だ。

バカみたいだ。

だからといって、

空を飛ぶ鳥になりたいわけでもないし、
ライオンに追いかけられる
シマウマにもなりたくないけれど。


ただ、毎日同じ仕事をするのに
嫌気が差しただけ。

淡々と。

適当に。


「なぁ、昼どう?」

「ん?あー…またお前か」

「またってなんだよ、またって」

「奢ってくれるならいいけど」

「つれねえなぁ」

そう言って俺の正面のデスクで
笑うのは、会社の同期、翔さん。

デスクの位置は、
入社した時から変わらない。

この爽やかイケメンの翔さんとは
もう三年の付き合いになる。


「…今日の俺は機嫌がいいからね。
一緒に食べてあげる」

「マジ?やった」


無邪気に喜ぶ翔さんを見ていると、
自然に笑顔になれた。

嫌な仕事のことも、
気にならないくらい。

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