
甘く、苦く
第88章 大宮【In Fact.】
二宮side
俺達の気持ちが通じ合ってから半年。
同棲をすることにした。
昨夜彼につけられた
紅い痕を見て溜め息をついた。
これじゃバレちゃうかも…
普段はスーツだし、
鎖骨くらいならギリギリ隠れるのに。
智ったら、わざと首筋につけるんだから。
「…バカ」
愛しい人の寝顔を見ながら、
悪態をついた。
ほんとに、バカ。
今が一番大切な時期だって、
お互いわかってるのに。
こんな痕、誰かにバレたら
仕事柄やばい。
絶対同僚にはバレたくない。
上司にもだけど…。
「…いってきます」
そっと智に口付けて、
ゴミ袋を持って家を出た。
男ふたりで暮らすには
狭すぎるアパートだ。
掃除をしていた大家さんと
挨拶を交わす。
冬なのにやけに晴れている。
昨夜降ったであろう雪が
朝日に反射して輝いている。
クリスマスはもう過ぎたが、
街路樹が少しずつ白く染まってきている。
そんな景色にトキめくのは、
やはり心に余裕があるからだろうか。
