
甘く、苦く
第88章 大宮【In Fact.】
会社に戻ってすぐ、
「あ、これ今度の会議のだから、
今日までに確認よろしく」
…だから、月末に仕事増やさせんなって。
「はい、わかりました」
バレないように溜め息をつきながら
デスクに戻れば、翔さんが
「おーおー、お疲れさん」
と、ニヤニヤ笑う。
「気持ち悪ぃ笑い方してんなよ」
「なっ」
「うるせぇ」
適当に纏められた資料を捲りながら
また溜め息つく。
「誰だよこれ、作ったの。
低能かよ」
悪態をつきながら
ペラペラと捲る。
「あっ!」
目の前の翔さんが大きな声を上げた。
「なんだようるさいな」
「その字…」
「はあ?」
「潤の字だ」
「…はぁ」
惚気んなって。
幸い、まだ昼休憩だったから
人は少なかった。
…ったく、この人うるさいなぁ。
「なに、じゃあこの確認
翔さんにお願いしていいの?」
「それは嫌だ」
「こっちだってやだよ。
こんな意味わかんない資料確認すんの」
ふう、と溜め息。
誤字多すぎ。
舐めてんのかコイツ。
「まだ帰ってきてないの?
松本潤」
「…ぽいな」
「あのさぁ、言ってやってよ。
こんな意味わかんない資料を
確認してくれる優しい先輩がいるって」
「意味わかんなくないだろー」
「意味わかんねえよ、ほら、こことか。
なーにが『翔子高齢化』だ。
脳みそん中翔さんのことしかねーんじゃないの」
「え、それ嬉しい」
「…気持ち悪ぃ」
だめだ。
このバカップル。
