
甘く、苦く
第89章 翔潤【純粋に】
お風呂から上がった翔さんは、
すぐに冷蔵庫からビールを出した。
「…また飲むの?」
「悪い?」
「昨日も飲んだじゃん」
「いーじゃん」
「もう若くないんだから…」
「なっ、」
「程々にしときなね」
翔さんはバツの悪そうな顔をして、
プルタブを開けた。
その顔があまりにも
切なそうな顔をしているから、
こっちまで切なくなってくる。
「も、そんな顔しないで」
「そんな顔ってどんな顔だよ」
うっせ、と俺の仕事をしている後ろで
ソファーにどかっと腰掛けた。
「っはー、うまー」
後ろでは幸せそうに飲む翔さん。
「潤も飲めば?」
「…今仕事中だから」
誘惑に負けてなんていられないんだ。
「ってか」
翔さんがふと思い出したように
声を上げた。
「さっき寂しいとか言ってたくせに、
俺が風呂から上がっても仕事してて
俺には何もしてこないんだー…」
まあ別にいいですけどー
なんて、
かまってほしそうにする。
…はあ。
「…もう、今は仕事中。
俺だって翔さんといろいろしたいよ。
でも、」
「言い訳?」
「違うよ、はぁ…」
こうなったら翔さんは
とことんめんどくさい。
