
甘く、苦く
第90章 磁石【色彩】
二宮side
甘い快感が全身に駆け巡る。
目の前の翔さんの顔が、
涙のせいでうまく見えない。
ぼやけていて、
うまく見えないけど。
だけど、
俺のことだけを見ている。
こんなに乱れている、
恥ずかしい姿の俺を。
「んっ…」
甘くて蕩けるようなキスばかりだ。
それに、
肌のぶつかり合う音はひっきりなしに響く。
頭の中はそれしか考えなれないくらい
思考力とか、判断力を奪われている。
揺さぶられているうちに、
頭の中が真っ白になる。
「あ、ぁっ…」
口元が緩んで、
だらしない声しか出ない。
視界がクリアになったと思えば、
翔さんの綺麗な指が見えた。
「可愛い顔が台無し」なんて、
涙を拭う。
「っは、ぁあっ」
そんなこと言われて、
嬉しくない人なんていない。
翔さんの首に手を伸ばして、
翔さんの体を引き寄せた。
覚えのある香水の香り。
俺の大好きな匂いだ。
「ほら、また泣く…」
優しく俺を包み込む翔さんの腕は、
何年経っても変わらない。
