甘く、苦く
第91章 モデルズ【思うがままに】
「そう思ってるの、
全然気づかなくてごめんな」
家に帰るまで、
ずっと同じことを繰り返していた。
「謝って欲しくない…」
「でも、泣かせたし」
「俺が勝手に泣いただけだよ」
「うーん、でも、」
「謝って欲しくないんだもん」
だって、俺は潤が謝る姿なんて
見たくないし好きじゃない。
「欲を言えば、笑ってて欲しい、かな」
ほら、俺ってどこまでも子供だ。
「…ほんと、いつからそんなに
我儘言うようになったの?」
呆れたように笑う潤。
俺だってわからない。
「早く帰ろ」
「今帰ってる途中」
「早く抱き締めてほしい」
「俺もいろんなことしたい」
「えっ」
「なに動揺してんだよ。
どうせ変なコト考えたんだろ、えっち」
「え、えっちなのは潤の方だっ!」
「あ、怒った」
「おっ、怒ってない!」
ああ、もう。
俺はやっぱり、年下のこいつに
翻弄されてばっかりだ。
…でも、そんなのも悪くはない、かも。
「なーに笑ってんの」
「んふふ、なんでもないよ」
ー終わりー