甘く、苦く
第91章 モデルズ【思うがままに】
今日の収録は比較的滞りなく進み、
時間通りに終わった。
「あ、」
いたいた、なんて缶コーヒーを片手に
潤が近づいてきた。
「帰る?」
どうしよう。
この前から俺、なんかおかしい。
潤のことまともに見れないし、
隣に熱を感じるだけで緊張しちゃう。
「…?」
顔を覗きこまれて、
俺の大好きな人の顔が見えた時。
衝動だった。
気づけば、唇を合わせていた。
唇を離せば、しっとりとした感触が
未だに残っている。
「ごめ、俺…」
なんかおかしい。
「ううん?俺は嬉しいよ?」
この前からなんか、やっぱり…
「潤がほかの人と話してると、
なんか、ヤダ」
我儘になってる。
「…メンバーも?」
「うん、」
「スタッフも?」
「そっ、れは、もっと、ヤダ」
「あー、泣かないの」
俺の中で、潤に対する特別の気持ちが
溢れて、溢れだしてくるから。
「好きっなのに、わかんない…っ」
俺だって泣きたいわけじゃない。
でも、好きの気持ちが大きすぎて、
止まってくれないんだ。