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甘く、苦く

第45章 にのあい【現在進行形】

二宮side




……好きだなあ。



そう思うようになったのは
もう五年も前の話。


けど、あの人だって男で俺も男。
いい歳なんだし、家庭だって
持ってもいいと思うんだけど……



ほら、またこうやって
俺に笑いかけて。

ファンがキャーキャー
騒ぐんだ。


あの人はかっこいいから。
誰からだって人気だから。
好かれてるから。


俺とは正反対のその性格に
憧れていたんだ。












こんな恋、叶うはずないのにさ。





「にの、帰ろ」

「……」



…無視してごめんね。

けど、離れないといけないんだ。



俺がベッタリくっついてるから、
堅いガードしちゃってるから、
あの人には彼女ができない。


俺のためにもあの人のためにも
離れた方がいいんだよね。



「大野さん、今日飲も」

「「えっ…?」」



あの人と大野さんが
同じような声を上げる。



俺はあの人の声とか顔とか、
全部好きだから顔見なくても
わかっちゃって。

それがなんか苦しくて。


なんでこんな恋あるんだろうって。



同性愛が認められたこの世の中で、
なんで俺はこんな苦しくなくちゃ
いけないんだろう。


…それは、自分が傷付きたくないから。

自分は傷付きたくない。

けど、他の人なら。

とか思ってる最低な奴。


こんな俺の性格、知られちゃったら
みんな嫌いになる。



「ほら、おじさん、行くよ」

「に、にの…」



俺は大野さんの腕を掴んで
楽屋からでた。


けど、大野さんが立ち止まる。




「にの、なんかおかしいよ」

「…どこが?
いつも通りだし」

「だって、相葉くんのこと無視してる」

「…そういう気分なの」

「好きなんでしょ?」

「…別に嫌いだっていいだろ。
大野さんに直接的には関係ない」




俺は大野さんの腕を離して
駐車場まで歩いた。




…大野さん、痛かったよね。
ごめんね。ごめん。



「…はぁ」

「二宮さん、ため息なんかして…
なにかあったんですか?」

「うーん…まあ」



マネージャーが疲れてるんですねって言って、
それ以上はもう、なにも言わなかった。
 

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