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甘く、苦く

第46章 磁石【move on now】session1

二宮side



…行っちゃった。


あ、でも今日は大野さん家に
行く予定だから…。



ちゃっちゃと着替えて
鍵を閉めたらもう完璧。


…今日は大野さんだけじゃないから。


待たせちゃったし割引くらい
してあげるつもり。



びゅうっと風が吹いて
桜の花がひらひらと舞う。


…櫻井さんはもう俺とした約束を
覚えていないかもしれない。




…俺は覚えているのに、
櫻井さんは覚えていないなんて、
こんなことってある?



「…着いちゃった」



そうこうしてるうちに、
もう目の前は大野さん家。


こんなでけぇ一軒家に
俺も住んでみてぇわ。


…一緒に住めば?って
言ってくれたけど、それは迷惑だよね。


軽くインターホンを押して
扉を叩く。



「おーのさーん」

「あーい?」



ガラガラっと扉が開き、
大野さんが顔を出す。


俺は大野さんに笑いかけて、
家の中に上がった。



ぴしゃっと扉を閉めて、
大野さんと濃厚なキスを交わす。


…ほら、スイッチ入っちゃった。


体の奥がウズウズしてきた。



「ん、ふ…っ」

「ふぅ…っ。」



キスが終わると、玄関の壁に押し付けられて
服の中に手が入ってくる。



「ここですんの?」

「我慢できねぇよ…」



大野さんの息はもう既に
荒くなってきていて。


ほら、こんなかわいい顔して
狼みたいな性格なんだ。



大野さんの手が俺の腿を
優しく撫でた。


それだけでも反応してしまう俺は
やっぱりおかしいのかもしれない。


「ふぁぁ…っ」

「もっと聞かせて?
二宮くんの声、好きだよ。」



「好き」だなんて、感情がない。


けど…それでも……。


偽りの温もりだっていいから
今の俺には必要だった。



「…ベッド、行こうか?」

「ふぁ、はぁい…」



大野さんが俺を抱き上げて
優しくベッドに下ろす。



俺の体はベッドに沈んでいった…。

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