甘く、苦く
第48章 モデルズ【反比例・比例】
俺はにのの隣に座り込もうと
する雅紀の腕を掴んだ。
「…え?…じゅ――「来て」
それだけ言って
楽屋を出た。
雅紀は後ろでなにも言わず、
顔を真っ青にして俺のあとをついてきた。
「…潤、なんで、」
「……。」
「言ってくんなきゃ、
なにかわかんないよ。」
「わかんないの?」
俺は雅紀を見下ろした。
雅紀を壁に追い詰めて、
行く手を阻む。
「わかんないのって…
わかるわけないじゃん。
…なんで俺が怒られなきゃいけないの?」
「え?」
雅紀は下唇を強く噛んで
俯いていた。
俺は雅紀の行動に困惑していた。
なにも言えない俺を見て
雅紀は自嘲した笑みを浮かべた。
「…潤さ、俺のこと弄んでんの?
それでまさか面白がってる?
潤の心にはさ、仮面が
必要なのかよ。なあ?
もっと自分の気持ちに
素直になれないの?」
雅紀にそう言われて、
俺はなにも言えなくなった。
弄んでなんかいない。
翔さんを好きだったことは
もちろん事実だ。
だけど、今は――。
「…ほら、なんも言えないじゃん?
結局、潤の気持ちはそんなもんだったんだよ。
これでわかったでしょ?
…もう、終わりにしよっか。」