甘く、苦く
第49章 磁石【move on now】session 2
…二宮が来てくれない。
メールしてもう
二時間も経つのに。
確かに、家から
会社までは遠いけど…。
さすがに遅すぎないか?
また売春なんか
やってんのか?
いや、それでも愛するって
言ったのは俺なんだから。
どんな二宮でも好きだって
言ったのは俺なんだ。
「あーっ…。」
デスクの上で頬杖して、
腕時計をただただ見ることしか、
今の俺にはすることがなかったんだ。
今日は大野さんちも行かないし、
松本さんちも行かないし…。
どこにも用がない。
いや、でも資料をまとめるって言う
めっちゃ面倒臭いことがある。
…それやっちゃうか。
「…よしっ。」
気合を出すために、
自分の頬を叩いた。
今日は定時に帰るんだ。
だって二宮が家で
待ってるんだから。
奥さんがいるのと
同じ感じなのかな。
大野さんも…
こんな感じだったのかな。
奥さんがいたときは…
こうだったのかな。
俺みたいな気持ちで
仕事してたのかな。
そんなこと考えてたら、
なんか泣けてきて。
だめだ。
仕事中なんだから。