
甘く、苦く
第50章 お山【君のためにできること】
それから、翔ちゃんは
とっても元気で。
収録のときも、
いつもより声が出てた。
「翔ちゃん、お疲れ。」
「あ、ありがと。」
翔ちゃんに缶コーヒーを渡した。
「あ、お金はいいから。
これ…傷付けちゃった代償ね。」
「傷付いてなんかないよ。
ただ…そういう夢を見たから。」
「え?そうなの!?」
うんって翔ちゃんが頷く。
…なんか騙された気分。
「じゃあ、130円。」
「は?」
「傷付けてないんでしょ?
だから、130円。」
「嫌です。傷付きました。」
「むうー!翔ちゃんの嘘つきー!」
「嘘ついてないよ。」
そう言って、翔ちゃんは
俺の腕を掴んで、
触れるだけのキスをした。
「…キスしたから130円。」
「高っ!」
「嘘だよ。翔ちゃんの馬鹿、阿保。」
「んだと。」
「わーっ、暴力反対!」
俺は頭を抱えて
楽屋まで走った。
翔ちゃんが飲み終わった
缶コーヒーを捨てて、
俺を追いかけてきた。
局内で走ったから、
怒られたのは言うまでもない。
