甘く、苦く
第52章 翔潤【曖昧love】
「潤、行こ?」
「うん。」
ジェルでセットしたばかりの
翔くんの髪の毛。
ふふ、触りたくなるなぁ。
春風がその髪を
微かに揺らしている。
「…じゅーん?
どうかしたの?」
また、首を傾けて俺を見つめる。
計算しているのか、そうでないのか。
全く見当がつかないけど、
ひとつだけわかること。
俺はやっぱり、翔くんが好き。
「なんでもないよ。
シートベルトしめてね。」
「はーい」
かちゃっとしまった音がすると、
俺はエンジンをかけた。
静かな車内に、
翔くんの鼻唄が響く。
何の歌かはわからないけど、
ご機嫌な翔くんを見て、
この上ない幸せを感じた。
あぁ、大好きだなぁ。
日に日に募る翔くんへの
『好き』の気持ち。
特別な想いだから、
伝えたいんだ。
恥ずかしくても、
伝えたいから。
でも、伝えられない
情けない自分が存在してる。
いつまでも翔くんを待たせて、
怒らせて。
ごめんね。
あと少しだけ待って。