甘く、苦く
第53章 磁石【move on now】session 3
朝、起きると。
隣には雅紀。
やっぱり夢じゃなったんだ。
「…んー?」
雅紀がうにょうにょと
動き始めた。
…さらさらと髪の毛が揺れる。
「…翔、ちゃん?」
「ごめん…俺……」
言いたい言葉が言えない。
喉が詰まったみたいで、
汗が出てくる。
「翔ちゃん、今日も休みでしょ?
俺は会社に行くからさ?
和くんと仲直りしなね?」
「おう…」
雅紀はスーツに
着替え始めた。
俺は雅紀のために
コーヒーを淹れていた。
…あぁ、いつもなら二宮が
このポジションにいるのに。
「…翔ちゃーん?
ほんっと…もうー。」
「あ、ごめん。」
「俺の携帯にいつでも電話していいから。
んじゃぁねー。」
「おう」
雅紀を見送って、
ソファーに座る。
雅紀の家は寂しくて。
何にも物がなくて、
逆に落ち着かない。
「さて、と…」
二宮はどこにいったのか。
それはわからないけれど、
もしかしたら、
体で金を稼いでたり。
また、変なやつに
絡まれて泣いてたり。
絶対、そうなんだろうなって。
俺が悪かったんだろうなあ、
なーんて思う。