甘く、苦く
第53章 磁石【move on now】session 3
目を開けたとき、
罪悪感に襲われる。
あぁ、やってしまった。
俺が一方的に飛び出して、
翔さんを責めて。
昔のことなんて、
どうでもいいのに。
でも、翔さんがアレを持ってることに
つい、カッとしてしまって。
責めて責めて、
一人で傷付いて…ううん。
違う。
翔さんだって傷付いた。
俺なんかにあんなこと言われて、
傷付いた。
少し前までは幸せだったのに、
いつの間にか崩れていく。
まだ眠ってる大野さんを見て
少し安心した。
…寒い。
薄手のタオルケット一枚じゃ、
裸の俺には足りない。
人の温もりが恋しくて、
大野さんにくっついた。
そしたら、じんわりと体の芯から
温まっていく感じがした。
「……。」
目を閉じたら、
また眠っちゃうから。
大野さんの綺麗な顔を
じっと見ていた。
むぎゅっと腕に力を込めたら、
大野さんが苦しそうに呻いた。
「二宮く…、やめてぇ…」
弱々しい声が聞こえて、
俺は腕を離した。
大野さんが起き上がって、
俺の頬を撫でた。
「泣いたの?」
「…え?」
「痕、残ってるよ。」
…うそ。
大野さんがはいって
手鏡を渡してくれた。
確認したら、
確かに痕が残ってる。
…俺の居場所は、
ここじゃないんだ。
直感で、そう感じた。