甘く、苦く
第54章 末ズ【ゲーム<?】
そんな楽しい時間は、
すぐに過ぎてくもんで。
気付けば、もう遅い時間。
「じゃ、また明日。」
「うん、またね。」
まーくんは、ひらひらっと
手を振った。
俺は振り向かないで手を振った。
「ニノっ…!」
まーくんの、少し焦ったような声。
「ん?どした?」
「一日早いけどっ…!
誕生日、おめでと!
また、後日ね!」
「んふふ、ありがと。
じゃあ、ハンバーグ奢って。
ほら、しやがれで出たやつ。
あれ、食べに行こ?」
「うんっ、奢るよ!」
まーくんの顔は、
笑顔で輝いていた。
まともに顔なんて、見れなかった。
眩しくて、目なんか開けてられなかった。
「…まだかなぁ。」
家に着いたら、
ソファーにそのまま座り込んだ。
膝を抱えて、体と足の間に
クッションを挟む。
「…おっそいなぁ…。」
潤くんの撮影が終わったのが
二時くらいだから、
そこから飲んだとしても
もうそろそろ帰ってきて良いはずなのに。
もう、八時手前。
瞳が潤んできて、
景色が歪み始めた。
あと、四時間も経てば
俺の誕生日だってのに。
そういう記念日くらい、
覚えてて欲しいのに。
一緒に越せたら良いな、
なんて思う。
今、俺の隣にいない人のことを
考えながら。