甘く、苦く
第56章 翔潤【隣にいたい】
……は?…え?
「はぁぁぁぁ!?!?」
「ちょ、翔くん!
ここファミレス!!」
潤が慌てて俺の
口をおしぼりで塞ぐ。
「んーっ…
げほっ。すまん。」
「……ほんと、どうしたの?
やっぱり体調悪かった?
ごめんね。連れ回しちゃって。」
…違うんだ。
今さら気がついた自分が
情けなすぎる。
いつからだ。
いつから…。
潤のことを、
こんなに……。
「ごめんな…。」
「ううん。
体調は?」
「大丈夫、だから。」
「そっか。」
そんな話をしていたら、
かき氷が来た。
かき氷の冷たさなんて、
俺の今の顔の熱さに
冷やしを与えてくれなくて…。
「んーっ、美味しかったねえ。」
「あぁ、あぁ。」
…あ、テンパりすぎて
二回も言った。
「ぷっ…」
「は?」
「ははっ、あははっ、
翔くん、どうしたの?」
大好きな…
俺の笑顔を向ける。
「…ううん。
何でもねーよ。」
「ふふっ、そう?」
ちょっと先を歩く、潤。
ちゃんと、道路側を歩いてくれる
紳士的なところがたまらない。
…ありがとう、なんて
恥ずかしくて言えない。
つか、なんで俺、
こんなに乙女なんだよ。
斜め前にある潤の左手。
思わず、
……手、繋ぎたい、な。
とか、思ってしまった。
うわぁぁあぁあ!!
もう、なんなんだよ!
なんだよこれ!!!
俺、どうしちゃったんだよ!
顔が、熱い。
「…マジ、なんなんだよ…」
ぽつり、と言った。
……つもりだったのに。