甘く、苦く
第61章 櫻葉【恋、始めてみました。】
俯いているニノの肩が
震えていることに気付いた。
…告白するの、
怖かったんだろうなって
思ったら、なんだかいじらしく
思えてきて。
「…ニノ、俺、……」
「……無理しなくて
いいから!
全然、へーき…だから…」
「……ごめん、」
「…わかってる。
だって相葉さんは…
翔ちゃんのこと
好きだもんね…。
嫌でも、気付くって…ふつー」
心の中で、何度も何度も
俺は謝った。
それが今、
俺にできることだから。
「…ねえ、相葉さん。
俺に、キスしてくれないかな…
バカみたいなこと
言ってるのはわかってる。
でも、…忘れられるから。
それだけ、お願い…
本当に、最後の我儘。」
「最後なんて言うなよ!
別れみたいじゃんか!」
「…お願い…一回だけでいい。
……ダメかな。」
…俺、こんなに悲しそうな
ニノの顔を初めて見たかもしれない。
ダンスの先生に怒られたときも
こんな顔に近かった
「……ねえっ…お願い…、」
「…うん、わかった。」
ニノの細い腰を引き寄せて
頬に手を添えた。
とろん、とした瞳が
目の前にあって。
ゆっくりと閉じていくその瞳。
俺もそれに合わせて目を閉じて
ゆっくりと…キスをした。
「んっ…」
……ニノ、ごめんね。
あと、ありがとう。