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甘く、苦く

第61章 櫻葉【恋、始めてみました。】

櫻井side



ん…?


朝、布団から起き上がれば、


…いつもの愛おしい人が
いない。


「…相葉くん、」


まさか。

帰っちゃった?

なわけないか。
…いや、でも…
あれだけ痛い思いさせたんだ。


「…相葉くん、」


また、彼の名前を呼べば、
虚しくなる一方で。

どうしたもんかと
考えて、
とりあえず顔を
洗おうかと思い、

寝室の扉を開けた。


…そのとき。


ふわり、と香る優しい匂い。
…あぁ、きっとこれは
卵焼きだ。と瞬時に悟った。


「…あ、翔ちゃん。
おはよう♡

ご飯できてるよ〜
一緒に食べようよー」


なんて、昨日と変わらない
笑顔を浮かべてるもんだから。

…昨日のは幻だったのかも
しれない。

なんて思ってしまう。



「おはよ。
体、大丈夫なの?」

「えっ、あー、あぁ、
まぁ、それなり。」

「…そっか。」


いつもより
歩き方がぎこちないのは、
そのせいだ。…多分。


「あっ、卵焼きどう?
いつもより砂糖減らして
作ったんだけど…」

「…美味しいよ。
相葉くんが作れば
なんでも美味しいから。」

「…ありがとう///」


瞳をうるうるさせて
言う相葉くんが
やっぱり愛おしくて。

…この人と付き合って
良かったな、なんて
今更ながらに思う

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