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甘く、苦く

第63章 磁石 【move on now】session 4






「ほら、
準備して」


翌朝、歯ブラシを咥えた
まーくんが俺を起こしに来た。

少し煙草臭い。
きっとベランダで
吸ってたんだろう。


「…ん、」

「ほら、起きて。

……もー、」


結局は俺の言いたいことを
わかってくれてて。

俺が両手を広げて
待ってれば、抱き締めて
起こしてくれる。


「和くん、また軽くなったかな?
ちゃんと食べなきゃダメだよ?」

「…ん、」


まだ眠ったくて、
言葉をしっかりと返せない


うっすらと目を開ければ
見覚えのある背中の上に
乗っていた。


「っわ、」

「ちょ、まーくん、
俺重いよ?」

「だからぁ、軽いってぇ。
俺、成人なんだからさぁ…」


バカにしないでって
頬を膨らませていう。


「てゆーかさぁ、
和くん、高校どうすんの?」

「あー…」


そう。

俺は高校にトップで
入学したものの、
それから一度もいっていない


…面倒だから。

それだけの我儘な理由。

でも翔さんはそういうとこ、
許してくれてた。


…居心地が、よかったんだ。


ただ、それだけ。

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