
甘く、苦く
第63章 磁石 【move on now】session 4
「マジでさー、
俺たち付き合お?」
行為が終わったあと、
微睡んでいた俺に
まーくんが声を掛けてきた。
「……わかんない」
「なんでさ、
こんなに相性ピッタリなんだよ?」
「…んー、」
実際のとこ、どうなのかな。
相性って大事だと思うけど
俺たちっていい方なのかな?
「そういや、明日和くんの
携帯買いに行かなきゃね。
ないと不便でしょ?
それとも…
取りに行く?」
「それはやだ!」
即答だね、なんて言われながら
まーくんがふわりと笑う。
…うん。
俺はあの日から、
翔さんと連絡も、
なにもしてないんだ。
恋人につかれたウソ。
騙された気分だった。
病院送りにまでされたんだ。
そんなヤツのこと…
忘れた方がいいのに
…のに。
俺の頭の片隅には
まだ翔さんがいるから。
