
甘く、苦く
第63章 磁石 【move on now】session 4
…あぁ、そうだ。
翔さん、無職になったのか。
どうしよ。
今の俺に出来ること…
「…ねえ、翔さん!これ!」
「…え?」
「職安、行ってきたの
何個かピックアップしてきたから…
興味あるの、受けてみようよ」
「……お前…」
迷惑だったかな。
こんなことしなくても
よかったかな…
でも、…一番に、なりたい。
「…ありがとう。」
俺を優しく抱き締める翔さん。
その腕は明らかに
細くなっていた。
「ううん、いいんだよ。
たくさん甘えていいんだよ…
だって俺、翔さんが
一番だから…」
「…ごめん。ごめんっ…」
泣きながら俺を見る翔さん。
俺が犯した罪も、
翔さんが犯した罪も、
絶対に消えないけど…
それでも。
翔さんと過ごした時間に
偽りなんて一つもない。
それも真実。
全部全部、丸めて
一緒にしちゃえばいいんだ。
もう、仕方ないんだ
ただ、俺の犯した罪は
大きすぎて。
すぐになんか、
消えないから──…
