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甘く、苦く

第63章 磁石 【move on now】session 4

櫻井side



「櫻井翔です。

御社の志望動機は──…」



面接ってこんな緊張
したっけな…

もっと、簡単で、
全然緊張しなかった。


いや…

大人だから。


俺の履歴書は、
昔と違うから。

高校卒業前に
すぐに就活を始めた俺。


だから、若いから。

若いから、ただそれだけの理由で、
雅紀と同じ会社に入れた。

あと、無駄に体力があって、
保険会社のくせして、
いい顔立ちしてて、
聞き上手で話上手だから、とか。



そんな理由だった気がする。


…あぁ、大野さん、
どうしてるのかな…

あれから誰が
行くことになったんだろうか


気になることは山ほどある。

だけど、あの人のことだ。

今も落ち込んでいるのだろう。



「ここ、…いいとこだよ。
あのね、大野さんって人が
経営してるとこで──…」

「え?」

「だから、大野さんって人が
経営してる飲食店なの。

ほんといいとこだよ。
今度一緒に行こう?」

「っ、大野さんって、
髪が茶髪の…?」

「うん。
おっとりした感じで
すごい優しい人だよ。」


…あぁ、なんだ。


変わってないのは、
俺だけってか。

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