甘く、苦く
第63章 磁石 【move on now】session 4
「ん、んん、」
ちゅ、ちゅ、と
音を立てて離れる唇。
「苦し、」
「…ごめん。」
「んーん、
嬉しいから、」
…ふふ。
ほんとに可愛い。
頬を赤らめながら言う
二宮が愛しくて仕方ない。
…でも。
キスの先に、
なかなか進めない。
「…ごめん、二宮──…」
「ううん。いいよ。
ゆっくりしよ。
今日じゃなくたっていいんだよ。
明日じゃなくてもいい。
キスだけで十分だよ。
俺も、…悪かったし。
翔さんだけじゃないよ
ね?」
いつもより輝く笑顔を
俺に向けて、
またキスをする二宮。
「ね、翔さん」
「ん?」
「…ごめん」
「なんで?」
「俺が、自分の快楽ばっか
優先しちゃったせいで──…」
「バカっ」
二宮のせいだけじゃない。
俺だって、
俺だって悪かった。
だから、
そんなの気にしない。
気にしなくていい。
「…いいんだよ。
そんなの、
…お前がいてくれるだけで、
いいから───…」
それだけでいい。
一番じゃなくたっていい。
お前の一番じゃなくても
いいんだ──…
ー続くー