甘く、苦く
第64章 にのあい【sunshine】
俺の兄貴は、
いつからか不良、と
いうものになっていて。
帰るのは大体日にちを跨いでるし、
そもそも帰ってこない日がある。
「…兄貴、」
「…まだ起きてたのかよ、」
心配して起きててやっても、
面倒臭そうにする。
「…邪魔だから、ソコ。
ていうかいい加減やめろよ。
鬱陶しいんだよ!!」
「兄貴、夜中だから…」
「じゃあお前が待ってなけりゃ
いいんだろ!!」
俺の肩を押して、
家に入り込んだ兄貴。
肩を押されたせいで
壁に勢いよくぶつかった俺。
「あ、」
その瞬間、悲しそうな顔した
兄貴がいた。
…ほら、兄貴は優しいから、
人を傷付けることなんて
できないんだろ。
なのに、なんで──…
「っ、くそっ、」
靴を履き直して、
また家を飛び出して行った兄貴。
…こんなこと毎日繰り返して、
兄貴は一体何がしたいんだろう…
「……はぁ、」
翌朝、ぶつけた肩が痛くて。
病院に行けば?って
何回も言われたけど。
そんなことしてたら
勉強が間に合わない。
「いいよ。
痛みが酷くなったら
また考えるから。」
「でも──…」
「寝違えただけだって。
だから平気だよ」
母さんをなんとか納得させて
学校に向かう。
「…あ、」
あれ、兄貴…?
俺に気付いたのか、
兄貴はめんどくさそうに
舌打ちをした。
「あに──…」
『鬱陶しいんだよ!!』
昨日言われた言葉。
…そうだ。
俺は鬱陶しい存在なんだから…