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甘く、苦く

第16章 磁石【ウソつき】

「また…あの夢…」

自分が泣いている声で目が覚めた俺。

情けない…

ニノは…元彼氏。
今は、"嵐"っていうグループでしか接点がない。

「はぁっ…」

なんか、仕事に行くのも、立つのも面倒臭い。



全てが終わったあの日。
そんなの、思い出さなくて良いのに…

でも…なんで?
ニノの事、思う度、顔が赤くなる。

それは、まだ諦めきれてないから。

口ではもう吹っ切れたって言ってても、
心の奥底では、ニノがあの人懐っこい笑顔で笑って戻ってくることを
望んでいる。


頭、冷やそ…

この時期は東京でも朝は寒い。

…当たり前か…

働かない頭でそんなことを考えながら服を着替える。

いつもみたいに、車に乗って、今日のスケジュールを頭の中で思い出す。


あんな夢見て、朝イチからニノと顔を合わせるの、なんか、気まずいな…

そんなこと考えてると、もうテレビ局の前。

「おはよーございまーす。」
「おはようございます。」

もう顔馴染みになったスタッフたちに挨拶する。

「ふう…」

楽屋の前で深呼吸。


平常心、平常心…

心を落ち着かせてドアノブに手を掛けたその時だった。

「あ、翔さん、おはよーございまぁす♪」
「ぅわっ!!!!」

俺の目の前にはニノがいた。

「うわって…笑
わたし、幽霊じゃないですよぉ?」
「あ、はは、ごめん…」

なんで、このタイミングでニノと会うんだよ…

「ほら、突っ立ってないで入りましょ?」
「お、おう…」

ぎこちないのバレバレ…

「おはよーございまぁす…ってあれ…?
誰もいませんねぇ、ね?翔さん。」
「え?うそだろ…」

マジか…

ニノと二人きりになることを避けてたのに…


「ま、うるさい人がいなくて楽ですけどね~」

ソファーに腰掛けるなり、鞄からゲームを出して始めるニノ。

起動音が流れた。


お気楽者だな…

俺は…こんなにも…ニノを襲いたい衝動を我慢してるのに…



「翔さん、今LI○Eきたんですけどぉ
リーダーとMJと、あいばか、遅れるそーですよー。」
「そっ…か…」

こんな時に限って、なんで…

付き合ってた頃なら喜べたのに、今は、喜ぶなんて到底無理。

「翔さん、今日、変わったニュースありますかぁ?」

横からずいっと顔を出してきたニノ。

俺は、コーヒーを落としそうになった。

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