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甘く、苦く

第16章 磁石【ウソつき】

「わ、翔さん大丈夫ですかぁ?相当疲れてるんですね。 」

いつもみたいに、天使の笑顔を向けてくるニノ。

でも、今の俺にとっては、すべてを乱すモノで…


「あ、あのさ、なんで、相葉くんたち遅れるの…?」
「あいばかさん?えっとですね、
昨日、三人で飲みすぎて潰れたらしいんですよ~
で、起きたのがさっきでー、今から向かうって言ってましたよ。」

三人で飲むなんて、珍しい…

「そっ…か…ありがと…」

ほんとに、気まずい。

スタッフさんでも誰でも良いから一刻もはやく来てくれ!


「てゆーか、なんで翔さんは三人のことが気になるんですかぁ?」
「え、仲間だから当然でしょ。」

ニノは、心配にならないのかな…?

「翔さん、優しいですね。さすがです。」
「あ、そ、ですか…」



優しいですね。か…

そんなの、嬉しくない。

俺のことなんてこれっぽっちも思ってないくせに、
なんでそんなことをさらっと言えるの…?

俺、全然わかんないよ。


「翔さん、わたしのこと…嫌いですかね…?
わたし、迷惑ですか…?邪魔……ですか…?ごめんなさい…」

ニノが悲しそうに笑う。

そんな顔、しないで…


「いや、そんなことはないけど…」
「けど…?なんですか…?」

俺に近付いてくるニノ。

「けど…もう、別れてるだろ!
お前が、別れたいって言うから!」

ニノの動きがぴたっと止まる。

お前から、別れを切り出したんだろ…
なんで、そんな顔するんだよ…


「そうですよね、わたしからですもんね。
今は…もう……翔さんは……」
「ニノ……?」

ニノは顔を上げてにこっと微笑むと、ソファーに戻ろうとした。

「え……?」
「あ、いや、えっと、これには深い意味があって……」

なんか、ニノの腕を取っていた。

「あの、翔さ……」
「ごめん……」

なにしてんだ…… 俺…

「ちょっと頭冷やしてくる…」
「翔さんっ!」

ニノが俺にきゅっと抱き付いてきた。

「ニノ……?」
「翔さぁん…ごめんなさぁい…
わたし、わたし…ほんとに、ごめんなさぁい…」

俺に抱き付きながら、ニノが泣いてしまった。

え…?

この状況、どうすればいいんだ…??

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