甘く、苦く
第64章 にのあい【sunshine】
「…ねぇ、和、」
「ん?」
行為が終わったあとの
余韻。
…そんなものは俺たちには
なくって。
こんなの恋人っていうのかよ。
なんて自分でも思うけど。
「月、綺麗だね」
「…あぁ、」
俺からは気の利いた言葉なんて
出てこないんだ。
『お前の方が綺麗だ』
とか
『お前と見てるからだ』
とか。
「…わかんないの?」
「なにがだよ。」
「…なんでもないよ。」
兄貴が拗ねたように
唇を尖らせた。
「なぁ、」
「なんだよう」
「…兄貴ってさ、
いつから俺のこと好きなの?」
「…わかんない。
……ても多分、中学ん時
くらいから…」
気付いたら好きだったよ、って
付け足す兄貴。
…気付いたら。
気付いたら好きに
なっているんだろうか?
…まあどっちにせよ。
俺は、今までだって、
これからだって、
きっと兄貴の背中を
追い続けるんだろう。
そして、
迷って迷って。
『愛』という名の
毒を注ぎ続けるんだ。
兄貴が俺から
離れていかないように。
離れられないように
してやるんだ…。
これからも、
こんな風に罪悪感と共に
過ごすんだろう。
でもいい。
それもいい。
兄貴の傍にいれるなら。
ー終わりー