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(仮)執事物語

第9章 STEP×STEP〔※杜若〕


昨晩、食卓で新しい蔵元と契約が出来た事を嬉しそうに話していた父が思い出される。

きっとその蔵元から頂いたお酒なのだろう。

ウチのお店には新しい商品を入荷すると、お客様に試飲して頂けるコーナーが設けてある。

ちょっとした立飲み気分で来店するお得意様も多い。

東乃宮の旦那様も、日本に帰って来ている時は、時々、お忍びでフラっとお一人でやって来ては、父と世間話をしながら楽しんで行かれるんだって。

でも……。

だからって……。

「もう! 莉玖は未成年なんだってば!! お父さん、分かってるの⁉」

「ミーちゃん、そんな固い事を言うなよ。父さんがお前達くらいの年には、よく飲んでたぞ?」

そう言ってヘラヘラ笑っている父をあたしはギロリと睨む。

「未成年者は飲酒は厳禁!! 法律で決まっているでしょ!! お父さんは捕まりたいの⁉」

あたしが両手を腰に当てて仁王立ちになり、そう言うと父は途端にシュンとした。

「う……それは……嫌だなぁ……」

「あたしだって、お父さんが捕まったら嫌だよ。それに、これからデートなんだから、酔わせないでよ!!」

「ミー。そんなに怒るな。こんくらいじゃ、俺酔わないからダイジョーブ」

「酔う、酔わないの問題じゃないよ? これからデートなのに……」

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