(仮)執事物語
第9章 STEP×STEP〔※杜若〕
いつだったか、あたしが道を間違えて迷ってしまい、1時間以上、歩かせてしまった事があった。
その時も、『その内着くだろ』とか言ってのんびり構えてた。
優しいと言えば優しいのだけれど、時々不安になるよ。
莉玖があたしを大事にしてくれているのは分かってる。
だけど、付き合い始めて1年くらい経つのに、あたし達の中は、未だに"手を繋ぐ"程度だもの。
"幼馴染"の域から、未だに進んでいない気がする。
マコ兄が、あたし達の仲を心配してくれるのも、頷けるかも。
そろそろ次のステップに進みたいなんて、女の子から言うのは、はしたない事かも知れないと思うと、中々、口に出来ないでいる。
こんな気持ち、莉玖は分かっているのかな……。
あたしは、出掛ける事を伝えようと、表通りに面した両親の経営するお店へと廻り込みガラス戸から覗き込む。
すると見覚えのある顔が、両親と談笑していた。
「ちょっ!莉玖!?」
あたしは店の中に入ると、莉玖の傍まで行き、彼が持つグラスを取り上げた。
「おう、ミー。おはよ」
「おはよう。……じゃないよ!コレ、どう言う事?」
あたしは彼から奪ったグラスを両親の目の前に掲げると、二人を睨む。
莉玖が持っていたのは、日本酒の入ったグラス。