(仮)執事物語
第9章 STEP×STEP〔※杜若〕
隣に立つ莉玖の顔を盗み見ると、こころなしか、朝会った時の顔とは違って見える。今までに見た事のない、大人の男の人の顔。
同じ莉玖なのに、違って見えるのはキスをしたからなのかな?
キス……。
しちゃったんだよね?
試着室での、少し強引な口付けを思い出し、身体が熱くなる"チュー"なんて言う可愛いもんじゃなく、大人のそれだった。それを思い出すと身体が熱くなる。
『いっぱいチューしよ?』
『俺が今までどれだけ我慢してたか……。今日はたっぷり教えてやる』
莉玖の言葉が頭の中をぐるぐると巡っては消えて行く。
あたしの視線が莉玖の唇を捉えると、急に恥ずかしくなってそれから視線を逸らせてしまった。
落ち着かない気持ちで電車に揺られながら、あたしはこれからの事を考え、一人緊張してしまったのだった。
~*Finis*~
2016.01.31.16:20