(仮)執事物語
第9章 STEP×STEP〔※杜若〕
「マコ兄からだ。『どこに居るんだ?』だって」
「そうなの? じゃあ、早く行かなきゃ!!」
あたしはそう言うと、次の目的地であったお店に足を向けて歩き出す。すると莉玖の手が、あたしの腕を掴んでそれを制する。
「莉玖?」
あたしは振り返って首を傾げると、莉玖はスマートフォンを操作しながら、『予定変更』とだけ言った。
「え? 何で? ちょっ! どこに行くの⁉」
あたしの腕を引きながら歩き出した莉玖に、頭に疑問符を浮かべながらも、それに従う。
今まで何でもあたしに任せてくれてた莉玖が、今日はちょっと強引だ。
「今まで我慢してたけど……。一回しちゃったら、我慢出来なくなった。だから、帰っていっぱいチューしよ?」
「え?」
「俺が今までどれだけ我慢してたか……。今日はたっぷり教えてやる」
そう言うと莉玖はニヤリと笑った。艶を帯びたその笑みに、あたしの心臓はまた暴れ出す。
あたしの心臓、今日で壊れたりしないよね?
莉玖の言葉に、期待半分、不安半分のあたしの心。
次のステップに進みたいとは思っていたけど、急に最後までとかないよね?
まだ、そこまでの心の準備が出来ていないあたしは落ち着かない。
そんなあたしの心の内を知らない莉玖は涼しい顔をして駅に向かうと、改札を潜り地元方面への電車に乗り込んだ。