(仮)執事物語
第3章 極光の下で〔杜若〕
「うわー!!真っ白!!」
辺り一面の雪景色に、私は思わず感嘆の声を上げた。
日本から遠く離れたアイスランド。そこに莉玖と二人でオーロラを見に、はるばるやって来ていた。
真っ白な雪原にポツンと佇む平屋建てのホテル。そして周りには何もない。
「りる? 近くに"ブルーラグーン"って言う温泉があるらしい」
窓辺に立って景色を見ていると、荷物を片付けた莉玖が近付いて来てそう言った。
「温泉!? いいわね! 行ってみようよ!」
私がそう言うと莉玖は微笑んで頷いた。
"ブルーラグーン"は世界最大の人工の温泉施設で、地下2000メートルからくみ上げるミネラルが豊富な地熱海水が源となっている。
火山の多いこの国は地熱発電が進んでいる。それの副産物利用と言うことか。
湖底に沈殿している白い泥はミネラルが豊富でパックやマッサージに使われているらしい。
営業時間は季節によって変わり、特にクリスマスは閉館するのが早い。
私達は、早速ホテルの送迎バスに乗り込んでブルーラグーンへと向かった。ホテルからはバスで4分程。
水着に着替えて外に出ると、肌を突き刺す寒さ。しかし、目の前に広がる、青くそして乳白色に濁った湖の様な温泉を目の前にしてテンションが上がった。
「りる。行こう」
そう言って莉玖が私の手を引き、湖の様な温泉へと飛び込む。
「きゃっ!」
勢いよく飛び込んで、頭から湯を浴びた私を莉玖は笑った。
「もう!酷いよ!?」
そう言ってお湯をバシャッとかけると、莉玖は私を抱き締め『周りに迷惑が掛かるから駄目』と言った。