(仮)執事物語
第3章 極光の下で〔杜若〕
その言葉にハッとして辺りを見回したが、取り敢えず迷惑は掛かっていなかったみたいだ。私はその事にホッと胸を撫で下ろすと、軽く莉玖を睨む。
すると彼はクスクスと笑いながら、『怒った顔も可愛い』といって頬に口付けて来た。
もう。狡いよ。そんな事されたら怒れないじゃない。
「あっちへ行ってみよう」
莉玖がそう言って私の手を引くから、私はそれに従って歩いた。
「わっ!結構深いんだね」
立っているのに私の肩にまで届く湯面。水深1メートル以上は超えているってことね。
「ん……。りる、こっち……」
そう言って莉玖はどんどん先へと進んで行く。彼はあまり人に囲まれている事を好まないので、人気のない方へと行くつもりなのだろう。
「ここらでいいか……?」
だいぶ人の少ないところまで来ると、莉玖は足を止めて振り返った。
「そうだね」
私がそう答えると、莉玖は私の後ろへと周り、抱き付いて来た。いつもと違う、彼の大胆な行動に心臓がドキリと飛び跳ねる。
「莉玖?」
「りるの肌……ツルツルで気持ちいい……」
そう言って、私の腕を擦る莉玖。硬度が高いからなのか、確かに肌が滑りを感じる程だった。
私の腕を撫でる莉玖の手は、次第に腹部を撫で始める。
「ちょっ!莉玖? 擽ったいよ!?」
「ん……だって気持ちいー……」
そう言いながら莉玖は私の身体のあちこちを触り始める。それは胸の辺りまで到達し、柔らかく私の胸を包んだ。
「ちょっ!駄目だって!!」
「何で?」
「だって……人が……」
そう言って私が俯くと、莉玖はクスッと笑って『お湯が濁ってるから見えない』と耳元で囁いた。