(仮)執事物語
第2章 柔らかな炎〔葛城〕
12月に入り、街はクリスマスに向けて華やかな装いを纏い賑やかになる。
「今年もあと少しで終わりね…」
車の窓から流れる景色を見ながら溜息を零す。
今年はいろいろな事があった。
その中でも、私にとって一番の重大事件は葛城さんと恋人同士になった事。
本当はあってはならない関係なのだけれど。
今日はそんな葛城さんとのお忍びデート。
『お祖父様へのクリスマス・プレゼントを買う』と言う名目の下、荷物持ちに葛城さんを指名し、邸を抜けてきた。
葛城さんの運転でちょっとしたドライブ気分を楽しむ。
勿論、お邸を出る時は後部座席に座って皆の目を誤魔化した。
「ねぇ、葛城さん?クリスマスはどうするの?」
邸から離れたところで助手席に移った私は、隣でハンドルを握る葛城さんをチラっと見ながら尋ねてみる。
「クリスマスですか?クリスマスはパーティがございますから…」
執事の仕事は年中無休。
主人がパーティを開けば、その準備や当日は来客の対応に追われる。
「あやかお嬢様はお友達のパーティに参加されるのではないですか?」
「去年まではそうだったけど、今年は葛城さんと過ごしたいから…」
「お断りされたのですか?」
彼の問いに私は無言で頷く。
すると彼は困った様に眉尻を下げた。