(仮)執事物語
第4章 冬の蛍〔黒崎〕
彼の手が背中のファスナーをゆっくりと下ろして行くのを感じると、私の胸がドキドキと騒ぎ始めた。
「ん……っ!!」
思わず身を捩るが、黒崎さんの腕がしっかりと私を抱き締めていて、逃れる事が出来ない。
「逃がさない。もう……我慢出来ないんだ」
そう言うと彼は私のドレスをゆっくりと床の上に落とした。
ああ……。
とうとう、この時が来たのね。
でも……。
やっぱり、恥ずかしい。
「恵里奈ちゃん……。抱いていい?」
いつもより少し掠れた声で黒崎さんが耳元で囁く。そんな事を訊くなんて狡いと思う。
余計にドキドキしちゃうじゃない!
私が俯いたままで居ると、彼は甘い声で『駄目?』と尋ねた。
駄目な訳がない。ずっとそうして欲しかったんだもの。でも、いざそういう時が訪れてみると照れ臭くて、素直に頷けない私。
「恵里奈ちゃん?」
そう言って彼が顔を覗き込もうとするので、私は咄嗟に顔を背けてしまう。
「照れてるの? 可愛いなぁ……。はぁ……。駄目だ、我慢出来ない!!」
黒崎さんがそう言うと、私の身体がふわっと持ち上がる。
「キャッ!?」
私の身体は、黒崎さんに姫抱っこをされて宙に浮いていた。彼は私を抱きかかえたまま、ベッドルームへ歩いて行くと、優しくベッドに私を下ろす。
私が見つめる中、彼はコートを脱ぎネクタイを緩めると、露わになる喉仏に黒崎さんの男を感じた。
彼は私を見据えたまま、ジャケットとベストを脱ぎ、シャツの釦を外す。すると引き締まった男らしい胸元や腹筋が姿を現した。