(仮)執事物語
第4章 冬の蛍〔黒崎〕
初めて見る黒崎さんの”オス”の本能に、私の鼓動は増々早くなり、心臓が壊れそうなくらいだ。
「いつもヘタレだって恵里奈ちゃんは笑うけど、俺だって男だよ?」
そう言うと黒崎さんは、私の腕をシーツに縫い付け、貪る様に口付ける。
「ふ……ん……」
塞がれた唇の隙間から、声が零れるが、それすらも逃さないと言う様に、激しく深く彼の唇と舌が私を侵す。
先程までの優しく心を溶かす様な口付けではなく、火を点けるような激しさに、驚きながらも私の身体は火照りを帯びていった。
腕を抑えていた手が外されると、私は黒崎さんの首に腕を回し、必死に彼の口付に応える。
すると何となくだが、雰囲気で彼が嬉しそうに笑ったのを感じた。
何だかそれが恥ずかしくて、身体がカッと燃える様に熱くなる。
そんな私の身体の上を黒崎さんの手が滑り、私の胸の膨らみを捉えた。
下着の上から柔らかく、壊れ物を扱うかの様にそっと撫でられる。
それがもどかしくて、彼の手の上に自分の手を添えると、私は誘う様に下着の中へと導いた。
彼は驚いた様に目を見開くと、唇を離し私を見降ろして口元に笑みを浮かべた。
「流石、恵里奈お嬢様……。大胆ですね?」
「もう……恥ずかしいから……言わないでよ……」
「はははっ。ゴメンね? ちょっと意地悪な事を言ってみたかったんだ」
そう言って明るく笑われると、何だか拍子抜けしてしまう。しかし、それは一瞬の事で、彼は口元を引き締めると真剣な眼差しで私を見つめるので、再びドキリと心臓が跳ねた。