(仮)執事物語
第4章 冬の蛍〔黒崎〕
私がぐったりしてベッドに沈むと、黒崎さんは私の中から指を引き抜き、手首にまで滴り落ちた私の蜜を舌で掬い取った。
快楽に侵されて痺れた頭で、私はそれを唯、ボーッと見ていたが、感覚が戻って来ると、途端に恥ずかしくなってしまう。
私は顔を見られたくなくて、手近にあった枕で顔を隠した。するとクスッと笑って黒崎さんが私の隣に横たわって、それを奪う。
「あっ!」
「何で隠すの? 可愛いのに…」
奪った枕を自分の腋の下に敷き、枕を追って中に浮いた私の手を取ると、黒崎さんはその甲に口付けた。
そんな彼の仕草にドキドキする。黒崎さんの顔がまともに見られなくて顔を背けると、大きな窓が視界に移った。
「あ……雪……?」
私がそう呟くと、彼も身を起こして窓の外を見る。
「本当だ」
そう言うと彼はベッドから下り、窓へと近付いて、外を見降ろした。
この部屋は、ホテルの中でも上階に位置する為、周囲の建物を見降ろす事が出来る、眺望の良い部屋だった。
「こっちへ来てご覧よ」
黒崎さんが振り返って、私を窓辺へと誘う。私はベッドの隅に置いてあったガウンを纏うと、彼の許へと行き寄り添った。
暗い冬の空に舞い落ちる白い雪。
瞬く街の灯。
それは蛍の様に淡く揺れて見える。
私達は暫く、その景色に見惚れた。
「綺麗ね……」
私がそう呟くと、黒崎さんも『そうだね』と言って私の肩を抱き寄せ、蟀谷に唇を押し当てた。
「積もるかな?」
私がそう尋ねると、彼は『それなら俺達の熱で融かしてしまおう』と言って私を抱き上げた。
「え?」