(仮)執事物語
第5章 Frost Flower〔葛城〕
私達は景色を堪能すると、元来た道を戻り、別荘へと帰りました。
途中、さぁっと風が吹いて、樹氷から飛散した氷の粒が、キラキラと輝きながら、舞い散りました。
それをキラキラした瞳で見つめる紫苑お嬢様。私は心のシャッターを切り、その瞬間を胸に焼き付けます。
「また、見に来ようね!」
紫苑お嬢様は、そう仰ると私の手をキュッと握り締めました。
「ええ。絶対に……」
私は微笑んでお嬢様に約束します。この先もずっと変わらずにお傍に居る事を。そしてお嬢様に沢山の素敵な思い出を作って差し上げる事を。
お嬢様の喜びは、そのまま私の喜びでもある。
貴女が嬉しい時は、私も嬉しく。
悲しい時は、私も心が打ち拉がれます。
私の心は貴女の物。
氷の華は儚いけれど、私の心は永遠に貴方を愛し続けます。
邸に戻ったら、クリスタルでフロスト・フラワーを模ったアクセサリーを作らせよう。
今日の記念に。
散らない氷の華を。
~*Finis*~
あとがき→