あなたの色に染められて
第14章 臆病者
『あっ!ちょっと待って!』
『なによ。』
さっきまで私にため息ばかり吐いていた美紀が パァッと明るい表情になったと思ったら
『遥香さんに見せつけちゃおうよ。“璃子が彼女です~”って』
そう 美紀の頭にピコーンとランプがついた感じで目を輝かせて
『どうやって?』
まだ半信半疑な私は冷めたラテをチビチビ飲んで
『京介さんに…球納め誘われた?』
『うん。ホームラン打てって言われた。』
『ほらね。璃子が彼女だよ。』
指をバチンと鳴らして 美紀はもう勝利宣言してるみたいに得意気に微笑んだ。
『どういうこと?』
『その球納めって面白いルールでね。 ダンナとか彼のユニホームの上を着て彼女は打席に立つのよ。背中に背番号と名前が入ってるでしょ?NAOYAとか。』
『うんうん』
この話は京介さんからは聞いていなかった。
『着るとさ 誰の彼女とか奥さんとかわかるじゃない?それでお披露目する人だっているんだから。』
ということは…
『それを私も着れるの?』
『だって ホームラン打てって言われたんでしょ?ユニホーム着れない人は打席たてないんだかよ?』
『…でも。』
『自信もって!京介さんの彼女はアンタなんだから。』
そんなこと言われてもまだ不安は残る
『もし ダメだったら…』
『その時はスパッと別れちまいな。璃子の良さがわからない男なんていらないよ。』
こういうときの美紀はすごく男前で一言が重いんだ。
『そうだね。それだったら遥香さんと京介さんを応援しなきゃね。』
『ばーか。呪ってやれ。』
正直 まだ不安はたくさんあるけど 好きな人を信じられなくなったら終わりだ。
『京介さんと一緒に野球やって彼の一番好きな世界を一緒に体験してごらん。すごく楽しいよ。』
美紀はお母さんみたいに優しい顔をして私に諭してくれる。
『…うん。』
『それともっと京介さんに甘えな。璃子は少し頑張りすぎだよ。』
『そうだね。一番大事なこと忘れてたかも。』
美紀が言うとおりいつまでも臆病者じゃダメなんだよね。
『よし!デザートたべるよ!』
『もう21時過ぎてるのに~?』
『いいの。今日は太る日なの。』
『じゃあ私は…チョコレートパフェ!』
プニプニ派の彼のために 美紀にお付き合いしますか。