あなたの色に染められて
第15章 公認彼女
球納め当日
『チンタラしてないで先いくよ!』
『美紀待ってよ~。』
午前中は仕事だった美紀と私は電車に飛び乗りグラウンドへと何とかたどり着いた。
…本当だ
美紀が言ってたとおりダンナさんや彼のユニホームを着た人たちがいる球場はいつもより賑やかで
…いい匂い
グラウンドの外では温まりそうな豚汁まで作ってる。
美紀は直也さんから預かっていた大きなユニホームをさっと羽織ると直也さんとベンチに挨拶に行って。
『…いいなぁ。』
心の声が漏れてしまう私は寒空の下フェンスに寄りかかりながら先に来ていた京介さんを待った。
私は直接京介さんからユニホームの話は聞いてない。
…遥香さんが着てたらどうしよう
不安で心が押し潰されそうになり顔を上げられずに地面ばかり見ていると
『へっ?』
パフッと帽子を被らされた。
『へ?じゃねぇよ。』
璃子は大きい帽子を被ったまま顔をあげるとそこには大好きな笑顔があって
『ゴメンな。待たせたな。』
京介さんはユニホームを片手で差し出して
『寒いからそのフリースの上から着ろよ。で…荷物はロッカーに入れてこい。ここで待ってるから。』
なんだか顔を赤くして素っ気なく話す京介さんはとても新鮮で
『はいっ!』
私は今まで悩んでたことなんかすっかり忘れて 大きな京介さんの帽子を被ったままユニホームを片手に更衣室まで走った。
**
『京介さん、もう少し璃子の気持ち考えてあげてくださいね。』
愛らしい後ろ姿を目で追っていると俺の肩を叩いたのは璃子の親友の美紀ちゃん。
『やっぱりなんかあったんだな。』
少し睨みつけるように俺を見上げると
『ちゃんと捕まえてないと…。知りませんよ~?璃子のこと狙ってる人はうちの病院にもいるんですから。』
『ウソ!マジ?』
俺を慌てさせる。
『そりゃ…そうだよなぁ。』
なんて頭抱えちゃって アイツのこと狙ってるヤツがいるのはあの病院に通ってたときから知ってるのに
『相手は腕利きのイケメン先生ですからね。知りませんよぉ~』
なんだよ…寄りによって医者かよ。
『マジ?それは不味いって。』
『そう思うなら 遥香さんのこと璃子に解るように安心させてくださいね。璃子は自分のことは後回しにしちゃう子だって知ってますよね?』
やっぱり遥香か
よし 今日白黒はっきりさせてやるか。