あなたの色に染められて
第15章 公認彼女
『お待たせしました!』
思ってた以上に大きかったユニホームの裾を掴みながら京介さんの目の前に立つと
彼は帽子のつばをペシッと叩いて私の顔を半分隠し
『…いいじゃん、スゲーかわいい。』
なんて 珍しく言ってくれた。
『えへへっ。』
彼のぬくもりに包まれている私は調子に乗って舌をペロリと出した。
すっと手を掴まれると
『まずは監督に挨拶な。』
俯きながら半歩後ろをついていく私。
『よう 京介。おまえもやっと俺に紹介できる彼女ができたか?』
ベンチに陣取るいまだに現役で指揮をとる監督に京介さんは頭が上がらない様子で頭を下げて
『京介のことよろしく頼みます。』
『いえ…こ…こちらこそ…』
監督は私の顔を見るとニコリと笑って帽子を取り頭を下げてくれた。
*
一番の難関を越えた京介さんは今度はグランドを出てクラブハウスへと足を向け
『璃子に会わせたい人がいるんだ。』
柔らかな笑顔を向け連れていかれた先は豚汁の香りが鼻を擽る場所
『幸乃さーん!』
大きな声で京介さんが呼んだ先で振り向いたのは笑顔の暖かい素敵な女性で
『あー!京介くん!』
手を降りながらベビーカーを押して
『もしかして噂の…りこちゃん?』
柔らかな笑顔に私は頭を下げると
『あー!りこちゃーん!』
私の足にガシッと抱きついてきたのは…
『コラっケンタ!ちゃんとご挨拶でしょ。』
『りこちゃんこんにちわ!』
…それってもしかして?
『長谷川さんの奥さんで野球部のマネージャーだった幸乃さん。』
『はじめましてケンタのママです。ケンタからいつも話を聞いてるのよ。』
『りこちゃん!オレたちラブラブなんだよね!』
私の足にしがみついたまま今日もカワイイく見上げる彼は私の小さな王子様
『ごめんなさいね。りこちゃんのこと大好きで家でもずっと璃子ちゃんのお話ばっかりなの。』
ベビーカーですやすや眠る赤ちゃんの額を撫でながら幸乃さんは
『春にこの子が産まれて全然来れなくて…京介くんが“俺にはもったいないオンナ”って言うから今日を楽しみにしてたの。』
『ちょっと!幸乃さん!俺そこまで言ってないだろ?』
『え~? この間うちで酔っぱらって散々のろけてたの誰だっけ~?“璃子に逢いたいよぉ”なんて。』
『あ~!もう…幸乃さん勘弁してよぉ…』