あなたの色に染められて
第16章 クリスマスイヴイヴ
『どう?うまい?』
『スゴくおいしいですよ。』
彼がお皿の上にサーモンを並べ 玉ねぎのスライスを添え 璃子特製のソースをかけただけの簡単なカルパッチョ。
全く料理をしない京介さんが並べた?作った?カルパッチョ。
『俺。料理の才能開花した?』
『そうですね。』
愛されたあとの私の体は 思いのほかに言うことを聞かなくて 少しお手伝いをしてもらうことに。
申し訳なく感じてたけど 一緒にキッチンに立つと 彼の優しさと好奇心で意外にも楽しい。
そんな彼は私の体を気遣って 買っておいたスパークリングワインを 炭酸水に変えて
『車で送るから。』
大事にしてくれる。
小さなクリスマスツリーのキャンドルをテーブルの中央に置いて 二人だけのクリスマス。
二人で微笑みあって楽しくおしゃべりして。
そんな雰囲気の中 彼は私の顔を覗きこむように
『なぁ。璃子。お前 医者に狙われてるってホント?』
『はい?』
『そいつって 一緒に学会行ったヤツ?』
探るように 確かめるように
『あぁ。狙われてるなんて大袈裟ですよ。美紀から聞いたんですか?』
『……やっぱり。そいつなんだぁ。』
小さくため息をついて
『もう 学会とか行かないだろ。そいつとそのぉ 二人とか…』
安心したくて聞いたのに
『ありますよ。明後日の25日はパーティーで 来月は2泊3日で あともう一つぐらい あったかな。』
さらっと答える
『はぁ? クリスマスにパーティーだぁ? で 泊まりってなんだよ。俺聞いてないけど。』
彼のイライラをよそに璃子は至って冷静で
『言いませんでしたっけ? なんだか先生がアメリカに行く関係で たくさんあるんですよ。行きたくないのに。』
大きなからあげをパクリと口に頬張り ニコニコした璃子。
『おまえさぁ。仕事なのはわかるけど。 断れねぇの?』
『私だってイヤですよ。彼女役なんて。』
『おい。』
あっ。
『ちょっと待て』
彼女役の話。言っちゃった。
彼の眼を覗きこむと 腕を組みソファー凭れ鋭い眼光。
『……ハハハッ』
笑うしかない。どんなに頬がひきつっていても。
『璃子。俺にわかるように話してみ』
クリスマス気分に浮かれた私は最大のミスをおかした。