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あなたの色に染められて

第16章 クリスマスイヴイヴ



『あっ。えっとぉ。ハハハッ。』

空いたお皿を手にとって 片付けようかなぁ。なんて 腰を浮かしても

目を合わされれば逃げられるわけもない。
床を人差し指で指して

『……はい』

こうなりゃ自然と正座な訳で

『彼女ってなんだよ』

『あのぉ。……川野先生』

消え入るような小さな声で

『あぁっ?川野?』

『……もう。ごめんなさい。』

何に謝ってるのか

『で。』

『先生 学会行くといろんな人に言い寄られて困ってて』

『んで。お前が彼女役?』

『……みたいで』

ハァ。盛大なため息をつく京介さん

『それだけ?…ふりだけ?』

『……ちょっと 腕…』

『はぁ?』

『ちょっとです!ちょっと。……添えるって言うか… のせるって言うか……』

『……どっちにしろアウトだろ。それ。』

腕を組んだまま天井を見上げて小さく息を吐く

『……ごめんなさい』

『……なんで最初に言わねぇの?まぁ 言いづらいとは思うけど。』

『……。』

『俺さぁ。そういうのキライ。』

……キライ
この単語が頭をグルグル駆け巡る

『……ごめんなさい』

『……。』

『……うっ。……ハァ。うっ。』

『…はぁ…。』

膝の上で手をギュッと握りしめて 彼のパーカーにポタポタと涙が溢れて

『…ごめんなさい』


『あのな。璃子。』

床から立ち上がり ソファーに座り直して ゆっくりと彼が話始めた

『俺はこんな性格だから 他のヤツがなんて絶対に許さねぇ。』

『……うっん。』

『でもな。言ってくれないことの方が もっとキツい。』

『……ごめんなさい』

はぁ。
せっかくのクリスマスなのに。何やってんだろ私。




『……だって。…遥香さんに取られちゃう気がして。……うっ。……恐くて…苦しくて……ハァ。……いつの間にか…こんなに……大好きになっちゃったから。……っつ。』

涙がポタポタと溢れる。

京介さんの話を聞いても 離れてしまう恐さが先にたって 自分がどうしたらよかったのか 正直 判断ができない。

ネックレスのトップを指で確認しながら

『……キライに……キライにならないで下さい。』

『…璃子』

肩を落とし 声を震わせながら 今言える思いを口にした





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