あなたの色に染められて
第17章 運命のイタズラ
『…璃子。…起きろって』
『……。』
『…羽田に到着するぞ』
『…んっ…』
『…キスすんぞ』
『はい! 起きます。起きますから!!』
年が明け そろそろお正月気分がぬけた頃 2泊3日の学会を終えて 私は今 帰りの飛行機の中。
今回の学会は川野先生の発表もあったため 準備から本番当日までとにかく忙しく 寝る暇なんて全然なくて。
やっと乗った飛行機。シートに体を預ければ あっという間に夢の世界へ。
『すいません。本気で寝ちゃってましたね。』
『よだれ。』
『やだ!ホントに?』
口を両手で隠して 感触を確かめて
『よだれ垂れたらおもしれーなーって思った。って言おうとしたんだよ』
『うー。…もう。先生のばか!』
『……でも今回はかなりのハードスケジュールだったな。助かったよ。サンキュ。』
意地悪のあとのお決まりの 私を黙らせる作戦。
本日も大成功なり
『……仕事ですから』
着陸体制に入った機体。グワンという振動とともに 京介さんの待つ東京に到着した。
お正月。新年の挨拶も兼ねて親戚も集まっている私の家に挨拶に来てくれて
まぁ。色々と冷やかされたけど。パパやおじさんたちとお酒を酌み交わして
随分と気を張っていたんだろうな。気がついたら呑みすぎちゃって 客間に寝かされてたっけ。
翌朝 寝癖がバッチリ付いた状態で 私の親に“昨日のことを覚えていない”と頭なんか下げちゃって。
こんなお正月もいいなぁ。なんて ママとキッチンでクスクス笑いあって。
クリスマス以来 私たちは二人で肩を寄せあって順調に歩んできた。
来週の土日には 幸乃さんから譲ってもらった宿泊券を使って はじめてのお泊まりに行く予定。
そう。来週のために今日まで働いたんだから! はじめての旅行なんだから。
飛行機を降りて ターンテーブルの前でなかなか出てこない荷物を待っている
~♪ ~♪
『はい。川野。…あっ?…璃子?……なに?……璃子の彼氏がどうしたって?』
『……えっ?』
…なに? …なに?
先生は私の顔をチラチラと見ながら
『…うん。…わかった。すぐに連れて行くから。』
『……先生』
電話を切ると ため息をひとつ吐いて
『……お前の彼氏。救急車で今 運ばれてきたって』