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あなたの色に染められて

第17章 運命のイタズラ






『……先生。』

『お前。スマホの電源落としたまんまだろ。だから俺んところにかかってきただけだから。』

『だって。……救急車で』

『子供をかばって 車に跳ねられたって。
頭を打って出血してるみたいだけど 縫うほどではないらしいし。ただ足首がひどく腫れてるらしくって。』

『……先生。どうしよう。』

『いいから。とりあえず乗れ。。』



先生の車の助手席から 流れる景色をただ目で追って

『……。』

『……大丈夫だよ。大丈夫だから。』

先生は何度も私にそう言って


大丈夫。大丈夫。と心で祈って。





コンコン。

焦る気持ちを抑えて ドアを開ける

『…璃子ちゃん。』

病室には、美紀と直也さんがいて

直也さんの影に少し見えた京介さんは 頭に包帯をグルグル巻いて 少し青白くみえる頬。

『京介さん…』

しーっ。と人差し指を口に当てて

『璃子 ちょっと 外でようか。』

私は美紀と直也さんに促されて 病室を出される。

『京介さんは?……大丈夫なの?』

心配で 美紀と話すどころではない。早く大丈夫?と手を握りしめたいのに。

『…璃子。話 聞いて。』

美紀は私から少し目線をはずして

『…璃子ちゃん。』

直也さんまで なんだか悲しげな表情で

『えっ。…なに??……意識はハッキリしてるんでしょ?…なに?足首やっぱり折れてたの?』

美紀は私に優しく微笑んで

『…璃子。』

『……なによ。どうしたのよ。ちゃんと言って!』

私は声を荒げた。

だって まだちゃんと顔も見てない。手も握ってないのに。

『璃子ちゃん。まだわからないんだけど…
京介さん。頭を打ったみたいで ちょっと記憶が……曖昧みたいで…』

…曖昧って?

『まだ わからないのよ。…ただ。』

…ただ?

『璃子ちゃんのこと話しても 話が噛み合わないんだよ。』

どういうこと?

『まだ わからないよ。…でも。璃子の記憶だけ…ないみたい。』

『…美紀。なに言ってるの? 』

『璃子ちゃん。美紀の話ちゃんと聞いて。』

聞いてるよ。聞いてるじゃない。

『私の記憶がないってこと?』

美紀と直也さんは目を会わせて少し俯いて

『覚悟してね。逢うなら。そばについててあげるから。』

首を大きく縦に振り 病室に足を踏み入れた。






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