あなたの色に染められて
第18章 Re:Start
『なんで 璃子ちゃんだけあの高級アイスなの?京介さんズルくない?』
『クッキーのお返し。お前が教えなかったから 俺 食ってねぇけど。』
『…スイマセン』
璃子ちゃんがグラウンドを出たあと 京介さんはあの小さな背中をおいかけた。
俺たちみんな 顔を見合わせて もちろんガッツポーズ
京介さんの心は確かに璃子ちゃんに傾いてるって。きっと もう好きだって 気持ちに我慢できなくなってるはず。
だって 並んで歩く後ろ姿を見てそのまま二人でどっか行っちゃえばいいのにってみんな思ったもんな。
でも グラウンドには別々に入ってくる。璃子ちゃんに買い物袋を両手に持たせて
京介さんはスタンドでおしゃべりしてる遥香さんにコーヒーを渡して。
遅れてグラウンドに入る。
それは璃子ちゃんを守るため。
きっと すぐに二人で買い出しに行ったのはバレる。それでも気遣う 京介さん。
璃子ちゃんは買ってもらったアイスの写メまで撮っちゃって。
スプーンを口にくわえて 大事そうに蓋を開けて
『うわぁ。』
目を細めて アイスひとつでこんなに嬉しそうな顔しちゃって
『…いただきます』
はしっこの方を少しだけ掬い ゆっくりと口に運んで。
『…おいしぃ~』
優しい顔して
『俺に一口ちょうだいよ』
『これは私のですから。誰にもあげません。』
ニコニコしてもったいなさそうに少しづつ掬い口元へ運ぶ。
『そんなにうまいの?』
『……うん。すっごく 美味しいよ。…すっごく。』
笑ってるのに泣きそうな顔してるように見えるのは俺だけ?
『ハーゲンダッツの?』
璃子ちゃんらしからぬ少し大きな声で
『…うん。ハーゲンダッツの』
まるで誰かに聞かせるように大きな声で
『……アフォガード!』
アフォガード?なにそれ。
『…ちょうだいよ。』
『…ダメです。京介さんに買ってもらったんだから。』
アフォガードに思いを込めた璃子ちゃん。
この時気づかなかったんだ
誰も思わないよな。
だって 二人は
赤い糸で結ばれてると思ってたから。